歯周病治療

原因分析と口腔管理で歯周病になりにくいお口へ

歯周ポケット検査・CT検査・顕微鏡検査を行って口腔内の状態を正確に把握することで、初めて適切な歯周病治療が可能になります。歯周病の進行状態、歯・骨・歯肉に生じているダメージ、歯周病を進行させている原因菌の種類を知ることが重要です。歯周病は進行しても自覚症状に乏しく、詳細な検査で進行状態を確かめて原因を分析することが、適切なケアや処置、治療のスタートになります。

日本人の歯を失う原因第一位

日本人の歯を失う原因第一位

歯周病は日本で歯を失う原因の第1位を長年占め続けており、日本人の約半数は歯周病という指摘もあります。そして、歯周病は健康な歯を次々に失う原因になるだけでなく、様々な疾患の発症や進行にも大きく関与していることが近年になってわかってきています。深刻な疾患も多いので、口内だけでなく全身の健康を守るためにも歯周病の早期予防や発見・治療が重要視されています。

歯周病と全身との関係

歯周病と全身との関係

歯周病の原因菌は、毒素であるリポ多糖体を作ります。このリポ多糖体が歯肉の血管に入り込んで運ばれ、全身の様々な疾患の発症や進行に関与していることが近年になって続々と明確になってきています。歯周病の予防やケア、治療は、歯と口腔環境を守るためだけでなく、将来に渡る全身の健康を守るためにも重要になります。歯周病との関連が指摘されている疾患は数多くありますが、中でも注意が必要な疾患をいくつかご紹介します。

脳梗塞

動脈硬化が進行し、脳の血管が血栓で詰まると脳梗塞を、心臓への冠動脈が詰まると狭心症や心筋梗塞を起こします。歯周病の原因菌が作るリポ多糖体という毒素は、動脈硬化の発症・進行や血栓形成のリスク要因であることがわかっています。高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病がある場合には、その治療に加え、歯周病予防や治療、ケアが重要になります。

誤嚥性肺炎

誤嚥とは唾液や飲食物が空気の通り道である気管に入ってしまうことです。唾液には歯周病の原因菌を含む多くの細菌が含まれており、誤嚥によってそうした細菌が気管支や肺に入り、そこで感染を起こして誤嚥性肺炎を起こす可能性があります。高齢になると飲み込む力の衰えや免疫機能の低下が生じることから、誤嚥性肺炎は高齢者の発症例が多くなっており、高齢者の死因としても常に上位に入っています。

糖尿病

糖尿病は血糖値を下げるインスリンが不足、または働きが低下することで高血糖が続き、全身のあらゆる血管にダメージが蓄積される病気です。歯周病の原因菌が作るリポ多糖体という毒素はインスリンの働きを低下させることがわかっており、歯周病と糖尿病はお互いを悪化させる負のスパイラルを起こし、口内と全身の状態を悪化させやすい傾向があります。逆に歯周病の治療やケアをしっかり行うことで、糖尿病の状態も改善されることもわかっています。糖尿病は他の生活習慣病と同様に動脈硬化を進行させて脳卒中や心筋梗塞のリスクを上昇させるだけでなく、免疫力の低下・神経障害・失明につながる深刻な眼疾患など深刻な合併症の多い病気です。将来的に発症リスクが高い予備群を含めた糖尿病患者数は日本に2千万人以上いると考えられており、歯周病の予防や治療、ケアは糖尿病の発症・進行予防にも有効です。

低体重児出産・早産

妊娠は女性の身体の様々なバランスを大きく変え、口腔環境も変化して歯周病発症のリスクが高まります。そして、妊娠中の歯周病は、低体重児出産や早産のリスク要因であることが判明しています。歯周病の妊娠に対するリスクは、喫煙・飲酒・高齢出産よりもはるかに高いという指摘もされています。歯周病が低体重児出産や早産に関与する原因に関しては、歯周病が作り出す毒素のリポ多糖体が血管を通じて胎児の成長に影響していると考えられています。

歯周病の進行について

軽度

歯肉炎

健康な歯茎はピンクがかっていますが、歯周病の初期段階である歯肉炎になると歯茎が赤く腫れ、歯磨きの際に出血を生じることがあります。自覚症状に乏しく、歯周病であると気付かないケースも多いのですが、この段階で早期に発見し、正しい歯磨きなどのセルフケアと歯科医院で受けるプロフェッショナルケアや検診によるプラークコントロールがしっかりできれば、歯肉炎のない健康な状態に戻すことができます。

軽度(歯肉炎)
中度

歯周炎

歯周病の腫れや炎症が悪化して歯と歯肉の間にできた歯周ポケットが深くなり、歯を支えている歯槽骨をはじめとした歯周組織の破壊が進んでいく段階です。歯茎が痩せて下がることで歯が長くなったように見えます。ちょっとした刺激で出血を起こすようになり、口臭が強くなることもよくあります。

中度(歯周炎)
重度

歯周ポケットがさらに深くまで広がり、歯と歯の間にも隙間ができます。歯茎からの出血に加え、膿も出てくるようになります。また、歯を支える歯槽骨が吸収されていってもろく弱くなり、舌などで押すと歯が揺れ動くようになります。うまく咀嚼できなくなり、噛むことで痛みを生じるなど、日常生活に大きな支障を及ぼし始めます。さらに進行すると健康でむし歯のない歯も次々に抜けていきます。

重度

歯周病の基本治療

プラークコントロール

プラークコントロール

歯周病の原因菌は、プラーク(歯垢)で大量に増殖しています。歯周病の発症や進行を予防するためには、このプラークをしっかり除去して口内にプラークをためないプラークコントロールが基本になります。どれほど先進的で高度な歯周病治療を受けても、日々のプラークコントロールの不足や定期的なプロフェッショナルケアと検診を受けなければ歯周病は進行してしまいます。

スケーリング

スケーリング

セルフケアの歯磨きでは落とせない歯石を取り除く処置がスケーリングです。歯石は歯周病の原因菌の温床になっていますので、きれいに取り除くことが重要です。専用の器具を使い、歯へのダメージを抑えた歯石取りを行っています。

PMTC

PMTC

歯科衛生士が専用の器具を使って行う歯面清掃のケアです。セルフケアでは落とせない汚れを徹底的に落とし、歯垢が付きにくいツルツルの状態に磨き上げます。

TBI(ブラッシング指導)

TBI(ブラッシング指導)

歯科衛生士がわかりやすく、丁寧に正しい歯磨きの仕方を指導しています。患者さまの歯並びや歯茎の状態によって、正しい歯磨きの方法は変わります。また、歯磨きの際のちょっとした癖の変化などによって磨き残しができますので、定期的に確認することも重要です。

ルートプレーニング

ルートプレーニング

歯周ポケットの中に歯石がたまっている中度の歯周病に進行したら必要となる処置です。歯根はエナメル質ではなくセメント質に覆われています。歯周ポケットが深くなると本来であれば歯肉に隠れているはずの歯根にプラークが付着し、歯周病菌の作る毒素がセメント質を汚染してしまいます。汚染セメント質があると歯石を除去しても歯肉が歯根に付着することができず、歯周ポケット改善が困難になります。ルートプレーニングは、歯石を取り除いた後に行う、汚染セメント質の除去処置です。歯肉付着の促進に加え、歯根表面をツルツルに磨くことで歯垢が再付着しにくい状態にする効果も見込めます。

歯周組織再生誘導療法

失われた歯肉や骨といった歯周組織を回復させる再生医療です。現状を維持して進行を抑制することしかできなかった歯周病治療の中で、失った歯周組織を再生できる画期的な治療法として注目を集めています。ただし、いくつかの条件に合わなければ可能にならない治療でもあります。歯周組織再生誘導法により、歯周病のない健康な歯周組織に近付ける可能性ができ、骨に受けたダメージによってインプラント治療が困難だったケースでも骨の再生を期待できる場合があります。

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